読書をしていない、本を買っていない、本屋で雑誌しか見ていないという罪悪感が日に日に大きくなっていた今日この頃。そこに痺れる情報が舞い込んできた。神保町のすずらん通りに新たにオープンする書店に、尊敬する高山宏さんが蔵書を販売するというのだ。よくよく調べてみると、この書店PASSAGEは、書評サイトALL REVIEWSが運営しており、ALL REVIEWSに寄稿している書評家たちが本棚の棚主となり、本を販売する共同書店だという。しかもプロデュースするのは仏文学者の鹿島茂さん。しばらくして歴史家の田中純さんも参加するという報を知り、いよいよ居ても立ってもいられなくなった。
オープン日は3月1日。前日、住所を調べがてらPASSAGEの公式サイトを見てみると、コロナウイルス感染拡大を鑑みて3月15日までは完全予約制となっていた。早速サイトから予約し、オープン初日の17:45-18:00の15分間を確保。すぐにメールが届き、予約時間を前後すると入店できないという注意書きに背筋が伸びる。
オープン当日いよいよ日も落ち始めたころ、京王線に揺られて神保町に降り立つ。A7出口から地上に出る。少し時間があったので、三省堂書店に立ち寄る。店内に5月8日最終営業および6月1日仮店舗へ移転の貼り紙を見つけ、寂しい思いがした。数年前には近所に住んでいた事もあり、良くお世話になっている書店だけに俄かに信じがたい。時間も迫ってきたので、すずらん通りに向かって歩く。軒先に一際目立つ洒落た店構えが見え、思わず1枚写真を撮る。5分前だったので、律儀に店前で待って店内の様子を眺めることにした。通りすがりの3人組が見知らぬお店に興味を持ったようで、店前のチラシに手を伸ばすと、スタッフさんが出てきて予約が必要云々の話を伝えていた。ひとしきり話が終わったので、そのスタッフさんに予約した旨を伝えると丁寧な応対で店内に案内してくれた。店内の写真を撮りたいなどと無粋なことは言わぬと決めていたが、写真もご自由にどうぞとおっしゃるのでお言葉に甘えてたくさん撮らせてもらった。

それぞれの棚には「Rue Balzac」「Avenue Victor Hugo」「Rue Charles Baudelaire」といった具合に、フランスの文豪の名を冠した「通り」の名前が付されている。ベンヤミンのPASSAGEを思い起こさせる店名といい、この棚の趣向とフランス式の標識にすでに胸が高鳴る。そしてお目当ては「Rue Jean de La Fontaine」。前述の高山・田中二氏はこの同じ棚に居を構える。
高山棚には絶版本を含め自著がずらりと並ぶ。棚の脇に何やら手紙が...。誘惑抑えがたく読んでみると、蔵書をおよそ30回に分けて売るという。「1、2回目はとんでもないコレクションで〜こわくてとても値はつけられません」と半ば自画自賛のユーモアがたまらない。対して田中棚は整然と大著が並ぶ。氏のTwitterには学魔・高山宏にあやかって同じ「通り」に棚を得たとの趣旨のことが書かれていた。硬軟両極に位置する二氏に思えるが、合い通ずるところも感じられなんだか微笑ましい。こちらの棚には本の並びについての指示書が置かれていた。あまりの贅沢なラインナップにどれを選ぶか即決できず、店内を一周することにする。



完全に前述の二氏決め打ちで来たので、他の棚については全く知らなかったのだが、伝統芸能に政治経済、歴史、雑誌、非売品、なんでもありの様相。あまり散財しないようにという決意で入店したのだが、結果3冊購入。高山本、田中本ともに迷いに迷ったが「痙攣する地獄」(高山宏、作品社、1995年初版)、「政治の美学」(田中純、東京大学出版会、2008年初版)、「アビ・ヴァールブルク記憶の迷宮」(田中純、青土社、2001年初版)にした。あとで写真を見返してみて棚の最上段に「終末のオルガノン」があることを見落としていたことに気づき傷心。「カステロフィリア」も気になったが、この先の出合いを楽しみにしよう。おそらく次回うかがう時には今回とは全く異なる本の並びになっているだろうが、それも巡り合わせと思いたい。


ピッタリ15分を満喫し、ご機嫌で店を出る。興奮冷めやらぬまま近場のカフェに駆け込む。買ったばかりの本を開くと、田中本には直筆のサインのほか、書評のコピーと本人が編集したムネモシュネ・アトラス展の解説資料が挟んであった。高山本の方はというと、期待通りの高山ワールド炸裂。美麗な自筆サインはもちろん、バーバラ・スタフォードを論じたかつての朝日カルチャーセンターのチラシやら雑誌「ダ・ヴィンチ」の今月の装丁大賞に選出されたページの切り抜き、若き日のニコラス・ケイジとメグ・ライアンが載った「シティ・オブ・エンジェル」の試写会の案内など出るわ出るわの大豊作。朝日カルチャーセンターに高山さんの「美男子文学講義」に通った数年前を思い出す。極め付けは澤野雅樹さんからの手紙。これはさすがに...と思ったが、これぞ高山宏なのだろう。
3冊とも少なくは無い頁数なので、積ん読になる可能性大いにありだが、目の前にあるだけで幸せな気持ちになる。YouTubeとSNS、NETFLIX三昧の日々だが、やはり本に囲まれた生活には無二の豊かさを感じる。
※下記概要はALL REVIEWS公式サイトから引用









オープン日は3月1日。前日、住所を調べがてらPASSAGEの公式サイトを見てみると、コロナウイルス感染拡大を鑑みて3月15日までは完全予約制となっていた。早速サイトから予約し、オープン初日の17:45-18:00の15分間を確保。すぐにメールが届き、予約時間を前後すると入店できないという注意書きに背筋が伸びる。
オープン当日いよいよ日も落ち始めたころ、京王線に揺られて神保町に降り立つ。A7出口から地上に出る。少し時間があったので、三省堂書店に立ち寄る。店内に5月8日最終営業および6月1日仮店舗へ移転の貼り紙を見つけ、寂しい思いがした。数年前には近所に住んでいた事もあり、良くお世話になっている書店だけに俄かに信じがたい。時間も迫ってきたので、すずらん通りに向かって歩く。軒先に一際目立つ洒落た店構えが見え、思わず1枚写真を撮る。5分前だったので、律儀に店前で待って店内の様子を眺めることにした。通りすがりの3人組が見知らぬお店に興味を持ったようで、店前のチラシに手を伸ばすと、スタッフさんが出てきて予約が必要云々の話を伝えていた。ひとしきり話が終わったので、そのスタッフさんに予約した旨を伝えると丁寧な応対で店内に案内してくれた。店内の写真を撮りたいなどと無粋なことは言わぬと決めていたが、写真もご自由にどうぞとおっしゃるのでお言葉に甘えてたくさん撮らせてもらった。

それぞれの棚には「Rue Balzac」「Avenue Victor Hugo」「Rue Charles Baudelaire」といった具合に、フランスの文豪の名を冠した「通り」の名前が付されている。ベンヤミンのPASSAGEを思い起こさせる店名といい、この棚の趣向とフランス式の標識にすでに胸が高鳴る。そしてお目当ては「Rue Jean de La Fontaine」。前述の高山・田中二氏はこの同じ棚に居を構える。
高山棚には絶版本を含め自著がずらりと並ぶ。棚の脇に何やら手紙が...。誘惑抑えがたく読んでみると、蔵書をおよそ30回に分けて売るという。「1、2回目はとんでもないコレクションで〜こわくてとても値はつけられません」と半ば自画自賛のユーモアがたまらない。対して田中棚は整然と大著が並ぶ。氏のTwitterには学魔・高山宏にあやかって同じ「通り」に棚を得たとの趣旨のことが書かれていた。硬軟両極に位置する二氏に思えるが、合い通ずるところも感じられなんだか微笑ましい。こちらの棚には本の並びについての指示書が置かれていた。あまりの贅沢なラインナップにどれを選ぶか即決できず、店内を一周することにする。



完全に前述の二氏決め打ちで来たので、他の棚については全く知らなかったのだが、伝統芸能に政治経済、歴史、雑誌、非売品、なんでもありの様相。あまり散財しないようにという決意で入店したのだが、結果3冊購入。高山本、田中本ともに迷いに迷ったが「痙攣する地獄」(高山宏、作品社、1995年初版)、「政治の美学」(田中純、東京大学出版会、2008年初版)、「アビ・ヴァールブルク記憶の迷宮」(田中純、青土社、2001年初版)にした。あとで写真を見返してみて棚の最上段に「終末のオルガノン」があることを見落としていたことに気づき傷心。「カステロフィリア」も気になったが、この先の出合いを楽しみにしよう。おそらく次回うかがう時には今回とは全く異なる本の並びになっているだろうが、それも巡り合わせと思いたい。


ピッタリ15分を満喫し、ご機嫌で店を出る。興奮冷めやらぬまま近場のカフェに駆け込む。買ったばかりの本を開くと、田中本には直筆のサインのほか、書評のコピーと本人が編集したムネモシュネ・アトラス展の解説資料が挟んであった。高山本の方はというと、期待通りの高山ワールド炸裂。美麗な自筆サインはもちろん、バーバラ・スタフォードを論じたかつての朝日カルチャーセンターのチラシやら雑誌「ダ・ヴィンチ」の今月の装丁大賞に選出されたページの切り抜き、若き日のニコラス・ケイジとメグ・ライアンが載った「シティ・オブ・エンジェル」の試写会の案内など出るわ出るわの大豊作。朝日カルチャーセンターに高山さんの「美男子文学講義」に通った数年前を思い出す。極め付けは澤野雅樹さんからの手紙。これはさすがに...と思ったが、これぞ高山宏なのだろう。
3冊とも少なくは無い頁数なので、積ん読になる可能性大いにありだが、目の前にあるだけで幸せな気持ちになる。YouTubeとSNS、NETFLIX三昧の日々だが、やはり本に囲まれた生活には無二の豊かさを感じる。
※下記概要はALL REVIEWS公式サイトから引用
■PASSAGE by ALL REVIEWS 概要
所在地 :東京都千代田区神田神保町1-15-3サンサイド神保町ビル1F
オープン日 :2022年3月1日(火)
営業時間 (2022/3/1から当面の間):15-19時
定休日 :不定休
運営 :ALL REVIEWS株式会社









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